研究概要 |
1.ガンマ線照射により活性化されるCaspaseの検索(平成12年度) ヒト正常線維芽細胞MRC5、ヒト乳がん細胞MCF7およびヒト白血病細胞HL60に30Gyのガンマ線照射を行い24時間後のCaspase-8、-9の活性化を定量し非照射群と比較した。MRC5とMCF7は野生型p53を有する細胞株であるが、MCF-7ではCaspase-8、-9の活性化は認められず、MRC5ではわずかにCaspase-9が活性化していた。一方、p53が欠損しているHL60ではCaspase-8、-9の双方の活性化が著明であった。 2.DNAチップによる遺伝子発現解析(平成13年度) ガンマ線照射したMRC5の遺伝子発現プロフィールを解析した結果、bc1-2ファミリー遺伝子の著明な転写活性化はみられなかった。Caspaseでは、Caspase-1,-6,7,10の転写レベルの上昇が認められた。しかしながら、Caspase inhibitorの転写活性化も同時に認められた。 これらの結果は放射線照射によって惹起されるCaspase活性化機構は、必ずしもp53により制御されているのではないこと、また、細胞種によっては同一線量の照射によって活性化されるCaspaseカスケードが異なることを示すものであった。さらに正常線維芽細胞が腫瘍細胞に比較して放射線抵抗性が高いのは照射によりCaspase inhibitorなどのアポトーシス抑制遺伝子の活性化が起こっているためと考えられた。また、照射により活性化されるCaspaseカスケードはE1B19Kなどのanti-apoptotic Bcl-2ファミリー遺伝子にて抑制されることから、照射によるCaspaseの活性化には、Bcl-2ファミリー遺伝子の転写レベルの変化よりもむしろタンパク質間の相互作用(たとえばBaxのdimerizationなど)の変化が大きな意義をもつことが示唆された。
|