今年度は顎顔面領域におけるCTアンギオグラフィー(以下CTA)およびMRアンギオグラフィー(以下MRA)の症例の蓄積を行うと共に、臨床的有用性について評価を行った。CTAについては、前年度の本報告書にて報告した手法を用いて、これを臨床症例に適用した。症例の内訳は、顔面部の血管腫3例、顎骨の良性腫瘍2例、口腔悪性腫瘍3例、頚動脈狭窄2例等であった。このうち顎骨の良性腫瘍症例は、顎切除後の再建手術のための吻合血管の選択を目的としたが、CTAを利用することによって2D画像よりも診断が容易となることが明かとなった。一方口腔悪性腫瘍症例では、腫瘍の栄養血管の描出を試みたが、歯科補綴物の影響等により、2Dを上回る情報は得られなかった。一方MRAに関しては、前年度と同様にphase contrast法の有用性を引き続き検討すると共に、臨床症例への応用を行った。症例の内訳は、顔面部の血管腫3例、口腔悪性腫瘍2例等であった。前者の1例では輸入血管が描出され、この領域におけるMRAの有用性が示唆された。また同時にGd造影剤の急速静注を併用したfast Dynamic MRIの有用性についても評価を行った。同法はGd造影剤の腫瘍内の動脈へのfirst passを検出できる手法であり、症例によっては腫瘍の栄養動脈の決定のために有用であった。したがってこれをMRAと組み合わせることによって、血管系の診断におけるMRIの有用性は更に向上することが期待できるものと考えられた。
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