研究概要 |
蛋白質脱リン酸化酵素1型(PP1)の細胞内局在は非常に特異的で、PP1δは細胞核に5-7個のドット様構造として、核小体に強力に発現し、その分子量は37kDaであった。この存在様式はリボゾームRNA合成の場と考えられ悪性腫瘍細胞に高度に発現し、硝酸銀により染色されるNucleolar Organizer Regions(NORs)の細胞内局在と酷似する。アポトーシスをおこしていない正常細胞では、核小体にPP1δの局在と類似するAgNORsが検出されるが、アポトーシス細胞では、この構造物は分解されて検出されない。アポトーシス細胞では分子量100kDaの蛋白の発現が減少し、逆に分子量80kDaの蛋白が新たに出現し、その発現量は増加した。この分子量100kDaの蛋白はNORsの構成蛋白ニュークレオリン、分子量80kDaの蛋白はニュークレオリンの分解産物である(Morimoto et al.,in press)。 我々はFas抗原が口腔関連各種疾患において特異的に発現し、口腔扁平上皮癌においては腫瘍組織の分化度によって著しく異なることを明らかにし、Fas抗原の発現は化学療法に対する病理的奏功率ならびに患者の予後を左右する因子のひとつである可能性を示した(Muraki et al.,2000)。さらに我々は、各種制癌剤が口腔上皮癌細胞(SCC25,SCCKN,SCCTF)にアポトーシスを誘導し、その作用機構が異なること、抗癌剤による癌細胞の薬剤耐性の一部はアポトーシス誘導能と関係すること(Okamura et al.,in press)等を明らかにしてきた。また、SCC-25細胞はFasレセプターとFasリガンドのmRNAと蛋白を発現し、その発現は抗-Fasモノクローナル抗体とオカダ酸により促進され、SCC-25細胞のアポトーシスはFas抗原を介している(Seta et al.,2000;Goto et al.,in press)。現在制癌剤及び放射線による口腔癌細胞の増殖阻害とアポトーシスの関係について検討中である。
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