悪性腫瘍の画像診断として、2-[fluorine-18]-fluoro-2-deoxy-D-glucose (FDG)や^<11>C-methioninをトレーサーに用いたPETが最近行われている。本研究では、新しい腫瘍トレーサーである^<11>C-Cholineを合成し、口腔癌への応用を検討することを目的に研究を行った。昨年度は、^<11>C-Choline集積の細胞依存性について分析した。FDGはS期の細胞に取り込まれたのに対し、^<11>C-CholineはG2/M期で最大の取り込みを示した。それに対し、^<11>C-CholineはG2期よりもむしろM期で最大に取り込まれることが推測された。M期というのは細胞分裂期であり、その後に来るG1期の細胞より体積が大きい。^<11>C-Cholineは、細胞膜に取り込まれることから、この集積は増大した膜の表面積に依存するということが予想された。今年度は、従来から使用されてきた^<11>C-methioninに関する細胞周期依存性について検討し、^<11>C-Cholineと比較した。その結果、Met集積は6時間後にピークに達しG1期になると約40%まで低下することがわかった。またMetのピークはG2/M期であることが確認された。今回の研究から、FDGあるいは^<11>C-methionin、^<11>C-Cholineを使用して得られたPET像では、腫瘍細胞の分裂指数と腫瘍組織の細胞間質比の両者が反映された像が得られていると推測されることが示された。さらに、ウサギの腫瘍モデルに^<11>C-Cholineを投与しPET検査を行ったところ、良好なPET画像が得られた。腫瘍細胞に対する^<11>C-Cholineの集積率は、FDGあるいは^<11>C-methioninと同等であり、今後、腫瘍診断を目的としたPET検査に十分実用可能なトレーサーになりうることが示された。
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