研究概要 |
口腔扁平上皮癌に対して手術療法や放射線/化学療法などが試みられているが、中には抵抗性を示す症例があり、臨床上大きな問題となっている。我々は、臨床的に使用頻度の高い化学療法剤であるカルボプラチン(CBDCA)に対する抵抗性の機序を解析する第一歩として、9種類の扁平上皮癌細胞株を樹立し、薬剤感受性を調べた。 口腔扁平上皮癌細胞株を種々の薬剤濃度で処理後48時間での細胞生存率により、細胞株は感受性株(MIT6,MIT7)と抵抗性株(MIT8,MIT16)に分けられた。感受性株に対して、CBDCAはミトコンドリアを介してアポトーシスを誘導した。このアポトーシス誘導に先だって、ミトコンドリア膜電位の低下、さらにカスペース-3の活性化が認められた。また、これらのアポトーシス誘導・進展には転写後のBcl-2ファミリー蛋白質の変化、すなわちBcl-x_L、Bax-αの切断が誘導された。一方、抵抗性株では感受性株に比べてBcl-x_Lレベルの上昇(約2〜3倍)が観察されたが、Bcl-2/Bax-αレベルやp53変異との相関は認められなかった。薬剤抵抗性とBcl-x_Lレベルとの関連性をさらに検討するために、感受性株にBcl-x_L遺伝子を移入したところ、多剤耐性を示した。さらに、抵抗性株をアンチセンスオリゴヌクレオチドやアンチセンスBcl-xLで処理し、Bcl-xLタンパク質レベルを低下させると、薬剤耐性株は感受性となった。 これらの事実により、扁平上皮癌細胞ではBcl-x_Lが多剤耐性因子として機能していることが示された。また、Bcl-x_L高発現多剤耐性株に対してアンチセンスオリゴヌクレオチドやアンチセンスBcl-x_L法が有力な治療法となるであろうと期待できる。
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