ラット顎下腺腺体内に1%DMBA/オリーブ油溶液を含ませたスポンジ片を埋入して作成した顎下腺癌を用い、Ha-rasの変異をPCR-SSCP法により検索した。正常ラット顎下腺では変異バンドは認められず、発癌剤埋入後12週を経過し形成された腺扁平上皮癌においては変異バンドを認めた。現在、その変異バンドより抽出したPCR産物の塩基配列を解析中である。 臨床標本における検索では、筋上皮細胞のマーカーであるカルポニン(CAL)と導管基底細胞のマーカーであるメタルチオネイン(MT)を用い、閉塞性唾液腺炎について免疫組織化学的に検討した。その結果、閉塞性変化を被った筋上皮細胞と導管様構造物の基底側細胞はCAL、MTの両者に陽性を示し、さらにこれらの細胞の増殖能が亢進することが判明し、これらの結果より筋上皮細胞や導管基底細胞が閉塞性変化を被ることで幼弱化することが示唆され、これをActa Histochem Cytochemに報告した。また、左側口蓋に発生した比較的大きな多形性低悪性度腺癌の症例を経験し、その腫瘍細胞においてS100蛋白、KL1ケラチン、上皮膜抗原(EMA)、癌胎児性抗原(CEA)、bcl2癌抑制遺伝子産物の発現が免疫組織化学的に認められるが、c-erbB-2およびK-rasの再構成や増幅を認めず、p53のエクソン5、6、7、8における変異は認められないことを岐阜歯科学会誌に報告した。
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