研究概要 |
筋肉の痛みと血流動態には深い関係があるとされ,従来から研究されてきている.強い収縮がもたらす筋肉の虚血が一つの原因であることは明らかであるが,Templomanibuler disorder(TMD)に伴う咀嚼筋の痛みでは,精神的な要因などによる比較的弱い持続性の緊張が注目されている.弱い収縮では筋肉内の血流があるにもかかわらず疲労や痛みが出現する.この原因として,筋肉の浮腫が挙げられている.浮腫の程度は筋肉に流入する血流と流出する血流のバランスに依存するので,供給される血液と筋肉内全体の血流動態および流出血流は区別して研究する必要がある.浮腫の程度は超音波検査法で筋肉の厚みの増加として捉えることができる.また,血流はドップラ機能を有する装置を用いることで評価できる可能性がある.しかし,咬筋をはじめとする咀嚼筋ではドップラ法による正常像も把握されていない.本研究では非侵襲的な超音波ドップラ法によって,健常者において咀嚼筋への血流の供給を評価し,浮腫の程度や痛みや疲労との関係を分析して,血流動態評価による筋肉痛の発現のメカニズムを解明することを最終目的とした. 本研究の成果は以下のように纏めることができる. 1.健常者において咬筋への血流を供給する動脈を超音波ドップラ法で明瞭に描出した. 2.顔面動脈の血流速を指標として咬筋への血流供給を評価する方法を確立した 3.持続かみしめ後の顔面動脈の最小血流速は咬筋の厚みの増加を指標とした浮腫の程度と相関することを示した. 4.健常者においては,持続かみしめ時の痛みや疲労の程度は顔面動脈の血流速と相関することを明らかにした. 以上より今後,咀嚼筋痛を有する患者の解析を本研究で確立した方法で進めることは妥当であると考えられた.
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