研究概要 |
石灰化に関与する遺伝子についていまだ報告されていない新たな遺伝子を発見する目的で、骨芽細胞としての特徴を有する細胞株Kusa Aを用い、石灰化を誘導する条件下でどのような因子が発現あるいは消失するかを、cDNA Expression Array(Clontech,Palo Alto,CA)を用いて検討した。Kusa A細胞は、マウス骨髄間質細胞由来の細胞で、in vivoにおいて石灰化することが確認されており、骨芽細胞としてかなり高度に分化した細胞であると推測される。今回、石灰化誘導因子(β-glycerophosphate+ascorbic acid)を加えない条件下で培養しても、オステオカルシンの発現、in vitroの石灰化が認められるが、誘導因子を加えることにより、それらがより早期に観察されることをまず確認した。次に、石灰化誘導を行っていないKusa A細胞と、誘導したKusa A細胞にcDNA Expression Arrayを適用した。cDNA Expression Array上にはinternal controlを含めて588種の既知の遺伝子がプロットされているが、石灰化誘導因子を加えない条件(αMEM with 10% FBS)で培養したKusa A細胞は、おおよそ140種の遺伝子発現が確認された。一方、石灰化誘導因子を加えて培養すると、発現する遺伝子は大幅に抑制され、おおよそ50種であった。このことから、通常の状態で発現している遺伝子が抑制されることが石灰化の誘導には重要である可能性が示唆された。しかし、解析する遺伝子が588種類とけっして多くはないため、今回の解析できなかった遺伝子が石灰化の誘導に重要な働きをしている可能性も考えられる。したがって、さらに大規模なアレイにての解析を検討中である。
|