研究概要 |
本年度の研究は口腔内の修復材料表面において極めて初期に形成されるプラーク中の細菌について分離,同定を行うことで初期付着細菌(Early Colonizer)の全体像を把握し,次いで異なる被験面に付着した菌の表面自由エネルギーを測定し,その分布について界面科学的解析を行うことを目的とした。 修復材料はアマルガムとコンポジットレジンを選択した。菌株の分離は義歯様装置に試料体を埋め込み,装置を被検者の口腔内に1時間保持した後に洗浄し,表面に付着した初期付着細菌を回収して5日間嫌気培養後に単離を行った。分離菌株のスクリーニング(グラム染色による染色性および形態観察と酸素感受性試験)の結果,両材料ともEarly Colonizerの大部分が通性嫌気性のstreptococciもしくはグラム陽性桿菌であることが確認された。材料間の比較では,コンポジットレジンからの分離菌株のほとんどがstreptococciであるのに対して,アマルガムではグラム陽性桿菌の占める割合が高くグラム陰性桿菌も検出されるなど菌叢の構成が複雑であった。またstreptococciについては16SrRNAgeneのPCR-RFLPを行ったところ,コンポジットレジンから分離されたstreptococciのほとんどがS.mitisであるのに対し,アマルガムではS.mitis以外の比率が多かった。 次いで分離菌株の接触角測定を行って材料間における構成菌種の表面性状分布の状態を比較した。その結果,コンポジットレジンに付着した細菌群の方がアマルガムに付着した細菌群と比較してやや疎水性の強い傾向が見られたが両者の間に有意差は認めなかった。 次年度はin vitroにおいて,Early ColonizerであるOral streptococciを被験菌として,各種修復材料表面への初期付着実験を行い,Oral streptococciの修復物に対する初期付着における付着機構について検討を行う予定である。
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