研究概要 |
初年度は口腔内の修復材料表面において極めて初期に形成されるプラーク中の細菌について分離,同定を行うこと、および異なる材料で作られた被験面に付着した菌の表面自由エネルギーを測定し,その分布について界面科学的解析を行うことを目的とした。アマルガムとコンポジットレジンを比較したところ,どちらも菌叢の大部分が通性嫌気性のstreptococciとグラム陽性桿菌であったが,コンポジットレジンからの分離菌株のほとんどがstreptococciであるのに対して,アマルガムではグラム陽性桿菌の占める割合が高くグラム陰性桿菌も検出されるなど菌叢の構成が複雑であった。またstreptococciについてPCR-RFLPを行った同定の結果,コンポジットレジンから分離されたstreptococciのほとんどがS.mitisであるのに対し,アマルガムではS.mitis以外の菌種が多かった。次いで分離菌株の材料間における表面性状分布の状態を比較した結果,両集団の菌株の表面自由エネルギー間に統計学的有意差は認めなかった。 本年度はin vitroにおいてOral streptococciの修復材料に対する初期付着性について検討を行った。その結果、唾液の存在しない場合は材料本来の表面性状が菌の付着に関与する事,修復材料では唾液処理により付着菌数が大きく減少する傾向にあるのに対してエナメルでは対照的に付着菌数が増加する傾向がある事,このような傾向の背景には唾液処理による被付着面のSFEの変化が関与している可能性のある事が分かった。コンポジットレジンとヒトエナメル質を用いて口腔内で表面にプラークを形成させ、共焦点レーザー顕微鏡を用いて三次元的にその様子を観察したところ,修復材料表面とエナメル表面では形成されるバイオフイルムの厚さや密度が異なることが分かった。
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