研究概要 |
歯根吸収を誘導する因子を得るために,械的刺激を受けた歯根膜線維芽細胞においてmRNA量の増加する遺伝子をスクリーニングし,以下の成果を得た。 1.培養ヒト歯根膜線維芽細胞は,フレクサーセルを用いて機械的刺激を与え,この細胞に発現する特徴的なcDNAをサブトラクティブハイブリダイゼーション法によって得た。mRNA量の増加する遺伝子は,そのcDNAをPCRによって増幅し,電気泳動を行うことでバンドとして検出した。これらはベクターにクローン化し,歯根膜線維芽細胞が機械的刺激によって発現する特徴的遺伝子の候補とした。 2.上記候補遺伝子は,歯根膜線維芽細胞において械的刺激によってその転写量を変化するのかを,リバースノーザン法で調べた。10種の候補遺伝子のなかで8種の遺伝子が,械的刺激によって転写量が増加することが判明した。そのなかで,最も転写量の多い遺伝子1-15については,ノーザンハイブリダイゼーションを行い,械的刺激によって転写量が増加することを確認した。 3.DNA断片1-15をプローブとして,ライブラリのスクリーニングを行い,新しいグループの転写因子に属する遺伝子を2種類同定した。 4.上記の遺伝子産物の機能については,細胞の老化との関連が示唆されてはいるが,いかなる因子の転写を司るのかについては不明である。従って,本研究で同定した2種の転写因子については,歯根膜線維芽細胞においてどのような因子の転写を司るのか,さらには歯根吸収に関わるのかを解析しているところである。
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