研究分担者 |
川崎 有希子 徳島大学, 歯学部, 助手 (60294708)
湯本 浩道 徳島大学, 歯学部, 助手 (60284303)
中江 英明 徳島大学, 歯学部, 助教授 (30227730)
吉田 佳子 徳島大学, 歯学部, 教務職員 (20243727)
藤中 恵子 徳島大学, 歯学部・附属病院, 助手 (00294710)
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研究概要 |
根尖性歯周炎は歯髄壊死に陥った根管系に口腔内の細菌が感染し、これらの細菌を主体とする病原性物質が根尖孔より根尖歯周組織に漏出することにより発症すると考えられている。したがって、どのような細菌が根尖孔の付近に生息し、どのように根尖歯周組織を侵襲するのかは、根尖性歯周炎の病因論のみならず、新しい治療法・診断法を開発する上で重要である。そこで今回、感染根管における根尖部の細菌を免疫組織学的に検討するとともに、走査型電子顕微鏡(SEM)で微細形態学にも検討した。感染根管の根尖部には様々な細菌が生息していたが、特にS.sanguis, P.nigrescens/P.intermedia, S.mutans, L.plantarum, L.caseiが高頻度に検出された。さらに根尖孔外ではL.plantarum, S.mutans, P.nigrescens/P.intermediaが高頻度に検出され、根尖部の細菌叢と根尖孔外に侵出した細菌が関連することが強く示唆された。特にL.plantarumは根尖孔外での検出頻度が最も高く、根尖性歯周炎の原因菌として注目される。SEMで根尖部を観察した結果、根尖孔外の細菌はバイオフィルムを構築しており、免疫応答など宿主の防御機構から逃れて生息していることが示された。この事実は、根尖孔外すなわち生体内に細菌が生息し、常に宿主と細菌が接して慢性病変を形成していることを意味している。さらに根尖孔外の細菌は根管内からの細菌の集団と連なった像が観察されたことにより、根尖部の細菌と根尖孔外の細菌が関連するという上記の免疫組織学的手法による結果を超微細形態学的にも裏付けた。根尖孔外の細菌は、根管の拡大・清掃による通常の根管治療では治癒しない、いわゆる難治性の根尖性歯周炎の原因としても重要と考えられ、根尖孔内外の感染実態のさらなる研究が望まれる。
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