本課題に関する研究は当初の計画概要に従い、次の2系について実施してきた。 1.牛の抜去前歯を用いたモデル試片についての破折試験 牛抜去歯を切削形成し、これに補綴物を装してモデル試片を作製した。これに繰り返し荷重を与えるための疲労試験機を試作した。本試作機の特徴は、実際のヒトの咬合の際に生じる弾力的な作用の再現を目標としているところである。即ち、従来は負荷方法が衝撃的であったり定荷重方式であるなど実際状況に合致しないという難点があったが、これを大幅に改善するためにエアーシリンダーを用いる荷重方式を採用した。これによりほぼ所望の負荷法が可能となった。現在、本機の試験運転を通じて負荷条件等につき検討中である。 2.口腔内破折歯から得られた除去破折片の観察 奥羽大学歯学部附属病院の外来患者で、歯牙破折を生じた患者さんに依頼し、破折片を採取した。破折片の多くは大臼歯であり、補綴処置歯であった。観察、記録は先ずメディカルカメラで行った後、破断面にパラジュウム蒸着を施し、光ファイバー式顕微鏡を用いて行った。次いで破断面の各部分記録をコンピューター処理して全体像の構築を行った。今後は、上記観察記録作業を継続するとともに、詳細につきSEM観察を加え、フラクトグラフィー観察を行う予定である。
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