研究概要 |
1.骨芽細胞培養系(ROS17/2.8骨芽細胞様細胞)にヒト1-34副甲状腺ホルモン(PTH;10-8M)またはbFGF(10ng/ml)を添加後,RNAを抽出しノーザンブロットを行った結果,PTHは添加6時間後にmRNAの発現を約5倍,bFGFは6時間後に約4倍に上昇させた。一方,両者の効果がmRNAの安定性に関与するかどうかを,mRNA合成阻害剤を用いて検討したところ,PTHおよびbFGFは安定性には影響しないことが明らかになった. 2.ルシフェラーゼベクターに,種々の長さに調節したプロモーター遺伝子を挿入し,ROS17/2.8細胞にリポフェクチン法にてトランスフェクションを行い,PTHおよびbFGFで刺激したところ,BSPのプロモーター約116塩基上流域を含むコンストラクトでルシフェラーゼ活性の上昇が認められた。BSPプロモーター約116塩基上流には,逆方向のCCAAT配列,サイクリックAMP応答配列(CRE)および下垂体特異的転写活性化因子(pituitary-specific transcription factor-1;Pit-1)結合配列が存在する。Pit-1配列の上流約半分を欠失したコンストラクトではCRE配列を含んでいるにもかかわらず,PTH刺激でルシフェラーゼ活性の上昇が認められなかった。以上の結果より,BSPプロモーター中のPit-1に類似した配列を介してPTHによる転写の調節が行われていると考えられた。bFGFに関しては現在検討中である。 3.BSPプロモーター中のPit-1配列をアイソトープで標識し,ゲルシフトアッセイにて核内タンパク質との結合性の検索を行った結果,Pit-1配列とROS17/2.8細胞核内タンパク質との複合体が観察された。さらにPTH刺激により,核内タンパク質とPit-1配列との複合体が減少することが明らかになった。以上の結果は,PTHによるBSPの転写の調節は,Pit-1配列に結合する核内転写因子が減少することにより行われていることを示唆していた。
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