当初の予定では、暫間的間接覆髄法を施した症例に対し、経時的に臨床的および細菌学的考察を加える予定であったが、条件を満たした症例が少なく、期日的に予定の症例をクリアーするのは困難であると思われる.そこで、間接覆髄施行中に露髄し抜髄の対象となった症例および、補綴学的要求で抜髄処置が必要な症例のうち冷水痛を有する症例に対して、齲蝕深部軟化象牙質中および歯髄中より細菌を分離・同定し、歯髄疾患における歯髄への細菌の侵入に対する臨床的指標を検索し、歯髄保存療法における細菌学的考察に対する準備実験を実施している.この準備実験の結果に関しては、保存学会誌において本年度中に誌上発表の予定をしている.どのような症例を今回の実験に選択・採用するのか、また患者に対する説明および承諾をどのように取るかについて再度検討を加え、深部象牙質からの検体の細菌学的な再現性について上述の準備実験を続行し、方法の信頼性を再確認のうえ、本実験を行う.本実験は予定を変更、平成14年度以降も症例を追加する予定であるが、現在まで2症例について臨床的および細菌的検索を行った、深部軟化象牙質からは2症例とも通性嫌気性菌が分離された、そのうち1症例については、暫間的間接覆髄法を施行3日後に、自発痛を訴え来院、抜髄処置を行なった.抜髄した歯髄組織からは、2菌種の通性嫌気性グラム陽性球菌が分離・同定された.あとの1症例については、予後良好で、3ヶ月後に除去・採取された残存軟化象牙質内からは細菌は分離されず、その後の経過観察も良好であった.今後できる限り症例を追加する予定である.
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