歯科金属アレルギーの最終的な治療はアレルゲンとなっている金属元素の完全除去である。本研究の目的は、口腔内に使用されている歯科用合金の内、口腔内に直接露出していない金属支台等が金属アレルギーの原因になり得るか否かを検索することである。平成12年度は、実際に口腔内において機能していた抜去歯のうち、金属充填物または金属補綴物を持つ歯を用いて、金属イオンがどの程度歯質内に浸透しているかを観察した。抜去歯はPBSにて洗浄後、レジンに包埋して半割し、割面を研磨してEPMAにより観察した。その結果、金パラジウム銀合金の場合、合金より1mm程度はなれた歯質にまで銀イオンおよび銅イオンが検出され、経時的に歯科用合金より溶出した金属イオンが歯質に浸透する可能性が示唆されている。しかし、臨床での抜去歯はその治療履歴やそれぞれの治療内容が不明であることが多く、金属イオンの歯質への浸透が、どの程度の期間で、またどのような条件下で起こるのかはわからない。そこで、現在金属による処置が施されていない抜去歯を用いて、保存期間、各種条件を統一した形で金属イオンの歯質への浸透を観察するための実験準備しているところである。具体的には、抜去後乾燥した履歴が無く、またホルマリン等の薬剤による蛋白質の固定をされていない抜去歯に対し、一定条件で根管充填、ポスト形成を行って、金属支台を合着し、数ヶ月から1年にわたって37℃液体中に放置するなどの実験条件を考えている。
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