研究概要 |
当教室で開発した6自由度顎運動測定器を用いて睡眠時ブラキシズムの測定解析法について検討し以下の結果を得た. 1.磁気空間に関する検討 大型磁気空間を対象として測定器の理論値と実測値の比較を行った結果、測定値と実測値の差のばらつきは最大で0.65%であった。また上下顎センサコイル間距離が50mm以内に近づけると測定データに影響した。 2.測定方法に関する検討 義歯装着者および顎顔面補綴患者の顎運動測定を行うことで被験者の口腔内の状態に制限されることなく顎運動測定を実現できるセンサの設置方法や顎運動の基準座標系の設定方法をあらたに考案した。顎運動の基準座標系として咬合平面座標系の替わりにCamper平面を採用することで被験者の治療前後のデータを比較することが可能となった。また上顎センサコイルを眼鏡を介して上顎に固定することで上顎無歯顎患者の顎運動測定が可能であった. 3.測定データの処理方法に関する検討 BS-3では高速フーリエ変換(FFT)を用いてディジタル信号処理を行い顎運動データを算出している.解析対象となる顎運動データ算出後,データに適した標本点数でFFT処理を再度行う方法としてFFT処理後のデータを保存し逆FFT処理を行うことで元波形を復元する方法を考案し計算機シミュレーションを行った.計算機シミュレーション用のソフトウエアは,Microsoft社製Visual C++で開発した.FFT処理後のデータは顎運動用周波数(2.0,2.4,2.8,3.2,3.6,4.0kHz)の実部と虚部を保存するだけで元波形を復元できるため保存するデータ量は生データを保存する方法と比較して数十分の1に圧縮することが可能であった.また、筋電図等の生体信号は微弱信号で,解析に耐えうるデータを得るためには磁場を形成する周波数成分からの分離が必要である。FFT処理は信号に含まれる周波数成分を分離できることからFFT処理後顎運動用周波数成分を除去し,逆FFT処理を施すことで理論的には生体信号のみが抽出可能である.この方法について計算機シミュレーションを行い生体信号と顎運動用周波数を分離できることを確認した.今後実際の測定データにこれらの方法を適応する予定である 4.センサコイルの小型化に関する検討 東京電子機材社製の直径2.8mm,5.0mmおよび9.0mmの球状コアを用いてセンサコイルを口腔内に設置するためセンサコイルの小型化についての試験を行っている。
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