研究概要 |
本研究は,咬合をより客観的に捉えるための統一的評価基準をつくることを最終目標に置いている.本年度新規購入したワークステーションを顎運動測定器および3次元座標測定器などで構成される現有の顎機能診断システムに接続し,データ処理能力を高めた.本年度行った研究として,咬合面形態および咬合接触状態を定量的に評価するためのパラメータを設定し健常者の6自由度顎運動データと歯列模型を3次元デジタイズして得られた形態データを結びつけて,咬合小面間距離などのパラメータを指標に機能時の動的咬合接触状態の定量的評価を試みた.また,臼歯部咬合小面を面の向く内外的方向によってA,B,Cの3種類に分類して,それぞれの咬合小面が食品咀嚼に果たす役割を検討した.その結果,咀嚼閉口相後半の咀嚼第4相において上下の歯で食品を捉えて圧縮,粉砕していく際に,まずAおよびC咬合小面がより早い顎位で対顎咬合面に近接して圧搾空間を形成し,引き続いて急激にB咬合小面が近接して圧搾空間を縮小し咀嚼終末位へと噛み込む様相が示された.また,AおよびC咬合小面を面の向く前後的方向からAM,AD,CM,CDに細分類し,各咬合小面の役割についてさらに検討を加えた.その結果,下顎の機能咬頭上の咬合小面であるAM咬合小面が食品を介在させながらも上顎頬側咬頭内斜面(AM咬合小面)との間で咀嚼運動第4相を誘導し,同時に食品を咬断していくことが示された. なお,本年度の研究成果について,第103回日本補綴歯科学会学術大会(平成12年6月10日)および第104回日本補綴歯科学会学術大会(平成12年11月10日)にて発表した.
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