研究課題/領域番号 |
12671892
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中川 雅晴 九州大学, 歯学研究院, 助手 (80172279)
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研究分担者 |
有働 公一 九州大学, 歯学研究院, 助手 (60145266)
松家 茂樹 九州大学, 歯学研究院, 助教授 (00108755)
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キーワード | チタン / チタン合金 / 腐食 / フッ素 / インプラント / 溶存酸素 |
研究概要 |
現在チタンおよびその合金は、優れた耐食性と生体親和性のために、口腔内インプラントをはじめ義歯床用など歯科臨床に広く応用されている。また、最近は齲触予防の目的で多くの歯磨剤や洗口剤にフッ素が添加されており、フッ素によるチタンの耐食性の低下が問題となっている。チタンの耐食性は表面に形成される不動態被膜(TiO2)に依存しているが、酸性環境下でフッ素が存在すると不動態被膜が破壊されてチタンの腐食が生じる。さらに、歯肉縁下やインプラント埋入部などの生体内は酸素濃度が低いため、不動態被膜の破壊が生じると被膜の再生が遅れることが予想される。そのような低酸素環境でフッ素が相乗的に作用すると、チタンは容易に腐食するおそれがある。本研究では、現在歯科臨床で利用されている市販の純Ti、Ti-6Al-4V合金、Ti-6Al-7Nb合金および著者らが試作したTi-0.2Pd、Ti-0.5Pt合金の腐食挙動におよぼす溶存酸素濃度およびフッ素濃度の影響を検討した。現在、歯科臨床で使用されている純TiおよびTi-6Al-4V、Ti-6Al-7Nb合金は、浸せき後に自然電位の値が-1Vを下回り、腐食状態となった。すなわち、溶存酸素濃度が低いと市販の歯磨剤に含まれる程度のフッ素濃度でチタンは腐食することが明かとなった。それに対しTi-0.2Pd、Ti-0.5Pt合金の自然電位は、浸せき後上昇して高い値を維持し、耐食性を維持することがわかった。 以上の結果から、溶存酸素濃度の低い環境にフッ素が相乗的に作用すると純Tiおよび従来のTi合金は腐食する可能性が高いことが示唆された。また試作のTi-0.2Pd.Ti-0.5Pt合金は同様の環境でも腐食せず、優れた耐食性を有していることがわかった。
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