研究概要 |
歯科医学の領域において,CTやX線フィルムに写し出された形態変化の情報から臨床診断を下すのと同様に,歯科理工学の分野でも,電子顕微鏡や光学顕微鏡を用いて歯科材料における微細組織の形態変化を捉える事は重要な研究手段である。本研究はこのような形態的情報を定量化し,新しい評価法に結び付けようとするものである。 試料として,1.陶材焼付用高カラット金合金(Au-11wt%Pt),2.金銀パラジウム合金(Ag-25wt%Pd-20wt%Au-10wt%Cu)を用いた。試料1については溶体化処理後、450℃で2000min,10000min,50000min等温時効処理したもの,試料2については溶体化処理後,1℃/minの定速で昇温時効処理を行い,345℃,370℃,395℃,419℃,442℃,476℃,500℃まで加熱したものに対して,その微細組織を光学顕微鏡観察し,撮影した。モノクロネガフィルムをスキャナで読み込み,ノジュール部分を抽出するための画像加工を行った後,ボックスカウンティング法を基に作成されたフラクタル解析システムによって解析を行い,時間または温度の変化によるノジュール成長過程のフラクタル次元と被度を算出した。 試料1ではノジュールの広がりに伴なってフラクタル次元は1.49から1.67へ,被度は12.2%から24.6へと変化した。試料2においてもフラクタル次元は1.06から1.89へ,被度は1.8%から99.5%へと増加したが,単なる面積比である被度の変化が現れるよりも低温側でフラクタル次元の大きな変化が現れており,ノジュール内部の組織の変化が面積の変化よりも低温側で起きていることが明らかになった。
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