研究概要 |
咬合接触の変化が、歯根膜から中枢への感覚入力に影響を及ぼすことは知られいる。その際、歯根膜における機械受容器を支配する感覚ニューロン刺激応答は、歯根膜の圧迫および牽引によって、神経ペプチドが特異的受容体に結合し神経終末が興奮すると言われている。その興奮は、遅い順応でも1つの咀嚼サイクルのなかの事象として一次求心性神経終末にインパルスが発生しているとされているが、長時間かかる順応に対しては、分子レベルでの報告はない。そこで、我々は、歯根膜機械受容器において、神経ペプチドと、その特異的受容体との結合が、ある種の蛋白によって阻害されるために、興奮に必要な情報が伝達できなくなっていくのではないかという仮説を立てた。本研究の結果、神経ペプチドの特異的受容体に対し、神経ペプチド以外に結合する蛋白を産生する遺伝子発現が明らかになれば、咬合力を増加させても、求心性インパルスは歯根膜の状態に応じて入力時に調節されていることになる。このことから、例えば咬合接触の変化に対して長い時間を経て感覚的に順応していく事象が、単に感覚閾値の変化として捉えるのではなく、分子生物学的に解明できると考え,sodiumpentbarbitalの腹腔内投与による全身麻酔したラットの右側下顎臼歯部を化学重合レジンにて1mm咬合挙上し、4w後に放血致死させ、臼歯を抜歯、歯根膜を摘出し、挙上側臼歯の歯根膜を挙上側歯根膜群試料とし,1本鎖cDNA合成反応を行い、得られた全mRNA種に対応するcDNAを鋳型とする32P標識DNAプローブを合成しようとしたが,咬合挙上方法の問題から脱離を多く認め,また得られた歯根膜の状態から合成反応に困難をきたした。この問題を克服するために強固な挙上方法の確立とコラーゲン遺伝子やp53などの検索に望みたい.
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