研究概要 |
歯根膜における機械受容器を支配する感覚ニューロン刺激応答は、歯根膜の圧迫および牽引によって、神経ペプチドが特異的受容体に結合し神経終末が興奮すると言われている。その興奮は、遅い順応でも1つの咀嚼サイクルのなかの事象として一次求心性神経終末にインパルスが発生しているとされているが、長時間かかる順応に対しては、分子レベルでの報告はない。そこで、我々は、歯根膜機械受容器において、神経ペプチドと、その特異的受容体との結合が、ある種の蛋白によって阻害されるか、あるいはアポトーシスによる細胞活性の低下のために、興奮に必要な情報が伝達できなくなっていくのではないかという仮説に立てた。神経ペプチドの特異的受容体に対し、神経ペプチド以外に結合する蛋白を産生する遺伝子発現が明らかになれば、咬合力を増加させても、求心性インパルスは歯根膜の状態に応じて入力時に調節されていることになるため、細胞周期の抑制やアポトーシスの誘導に活性を持つことが明らかになっており、癌抑制遺伝子としても知られているp53の遺伝子発現を観察した。sodium pentbarbitalの腹腔内投与による全身麻酔したマウスに対して化学重合レジンにてピボット状の咬合挙上を行い、1〜4w後に抜歯し歯根膜を摘出し、その歯根膜を挙上歯根膜群試料とし,非挙上マウスの歯根膜を非挙上歯根膜群試料としてm-RNAを抽出し、RT-PCR施行後に遺伝子発現を解析したところ有意な差は認められなかった。挙上用レジンの摩耗や脱離の問題に加えて、細胞周期やアポトーシスの関与が低い事が示唆された。今後は実験的咬合接触変化を再検討し、p53に加えて骨と歯根膜に関与する可能性の高い遺伝子を用いた発現の解析も行いたい。
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