研究概要 |
キャスタブルセラミックスを用いた10年以上の臨床経験から、短期間で破損する修復物が多いことから組成の変更を考えた。従来のキャスタブルセラミックス(OCC)をベースにこれに5mol%のマイカ結晶を増量(MA-5)、5molと10mol%のβ-スポジウメン結晶を増量(SP-5,SP-10)した素材を作製した。OCC、MA-5、SP-5、SP-10のそれぞれを鋳造して4×3×25mmの角柱試料に作った。これらの試料を温度883℃と933℃、係留時間0,30,60分で結晶化熱処理を施したそれぞれの試料の3点曲げ試験を行った結果、OCCの933℃、0分係留が最も高い値(196.08±30.63MPa)を示し、MA-5が最も低い値(87.13±25.13MPa)を示した。そこで、客観的に強度を比較するため、933℃、0分係留(H)と従来のOCCのマニュアルに従った883℃、0分係留(N)の破壊靭性試験6×6×6×12mmのプリズムを製作し、Notchless Triangular Prise(NTP)法によって、Nが2.54±0.37MPa・m1/2、Hが3.35±0.52MPa・m1/2でHが有意に高かったことを確認した。そこで、エレクトロフォーミング法によるOCCを補強したところ、OCC単体に比べて有意に高い強度を示すことから前歯冠状試料による圧縮試験においてもOCC冠の90.92±10.13kgfに対して補強冠では118.17±21.83kgfと有意に高い値を示した。したがって、OCCの組成の変更は従来のOCCの強度を凌駕し得なかったが、これはその組成が優れていることを示している。また、エレクトロフォーミング法による補強の可能性も確認されたが種々の試験結果からSDのバラツキは欠陥に起因するものと思われ、徹底した欠損除去法の究明が必要と思われる。
|