研究概要 |
歯科用コンポジットレジンおよび歯科用接着剤のベースモノマーは、粘度が高いため、低粘度のモノマーで希釈して全体の粘度を低くして用いられているのが現状である。この希釈剤モノマーが硬化体の物性を低下させていることは明らかである。このため、ベースモノマーそのものを低粘度化することを目的として研究を行った。bis-GMA類似の化合物として、ビス-フェノールAD型エポキシモノマーのメタクリル酸誘導体である、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイロキシプロポキシ)フェニル]エタンおよび関連化合物としてビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイロキシプロポキシ)フェニル]メタンを合成し,低粘度ベースモノマーとしての可能性を検討した。合成したモノマーは、液体クロマトグラフィーで未反応試薬および副生成物を分離除去して精製したのち、irおよび^1H-NMRにて確認を行った。これらモノマーの粘度は、コーンプレート型粘度計を用いて測定し、bis-GMAの粘度と比較検討した。続いて、モノマーの重合性について、カンファーキノンを用いた光重合性を調べ、それぞれの光重合体について、曲げ強さ等の機械的性質を測定した。この結果、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイロキシプロポキシ)フェニル]エタンの粘度は、25℃で0.5rpmのとき、約110,000mPa・sとなり、bis-GMAの約1,370,000mPa・sと比べて約1/10と極めて低い値を示した。このモノマーのカンファーキノンを用いた光重合性も良好であり、重合体の機械的強度もbis-GMAと同等であることがわかった。したがって、今回合成したモノマーの中で1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイロキシプロポキシ)フェニル]エタンが、コンポジットレジンや歯科用接着剤のベースモノマーとして有望であることが明らかとなった。
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