研究概要 |
平成12,13年の2年間に渡る成果としては.下記の通りである. 我々は,世界で始めて株化に成功したヒト歯肉上皮細胞(HGE)を用い,各種生体材料との生体親和性を細胞生物学的に検討している.この2年間における成果としては, 1.平成12年度において,アドバンス社よりヒドロキシアパタイト(HA)の結晶性を向上させたコーティング材料を主とし検討を行なった.その結果,細胞の初期接着性に関し有利な表面構造を示していることが新しい知見として得られた. 2.平成13年度はさらに,材料を加え検討を行なった.材料としては,チタン,HA埋入型チタン水熱処理HA,多孔体HA,高速ジェットフレーム溶射HA,プラズマ溶射HAをファルコンを対象としてHGE細胞,MC3T3細胞,ヒト骨細胞において実験を行なった.現在,結果を分析中であるが,細胞によっても結果が異なり,また,ヒト骨細胞では,各種HA材料は総べてにおいてチタン,ファルコンと比較して親和性が乏しい事,高速ジェットフレーム溶射HAのみが培養液中のタンパクを早期に吸着し接着が始まるなど様々が結果が得られている.本結果の一部は,2001年6月に行なわれた7th Biomimetic Engincering : A New Role for Ceramics, June 14 Faenza(Ialy)の招待講演の中で報告している.さらに経済産業省産業技術総合研究所(NIRIN), IRTEC-CNR : National Institute for Ceramic Technlogy Italian National Research Councilなどからの研究依頼があり,新しい生体材料の共同開発と細胞生物学的検討が予定されている.現在まで,ヒト歯肉上皮細胞を用いたin vitroの実験は5編あり,内3編はprimaryであり,2編はSGL細胞である.SGL細胞を用いた2編の実験において細胞培養期間が全く異なりSEM像から,多角形の構造を示すも株化されたものとは考えにくい.よってヒト歯肉細胞にもっとも近い本細胞株を用いた研究の成果はin vivoへの実験,および臨床に対して多くの示唆を与えるものと考えている.
|