研究概要 |
抗菌性義歯床用レジンの製作を目的に,アパタイトを基材とする2種の抗菌剤を添加した義歯床用レジンを試作し,その抗菌効果,曲げ強さ,耐変色性の経時変化を評価した. 抗菌剤としては,試作ケイ酸含有アパタイト(Si-HAp)と銀焼結アパタイト(Ag-HAp)を使用した.これらを市販義歯床用レジンの粉末に硬化体換算で3〜5wt%添加した試作レジンを調製し,メーカー指示の条件で重合して硬化体を得た.デンチャープラークの原因真菌とされるCandida albicansに対する抗菌効果をフィルム密着法により,水中浸漬9日,2ヵ月,6ヵ月後の試料を用いて評価した.また,実際の応用を考えた場合,強度,変色に対する配慮も必要である.そこで,ISO-1567の床用レジンン規格試験に準じた曲げ試験により,水中浸漬2ヵ月,6ヵ月後の試作レジンの曲げ強さ,弾性率,たわみ量を評価した.さらに,水中浸漬1ヵ月,4ヵ月,6ヵ月後の試作レジンの色差を測定し,耐変色性も評価した. 抗菌剤添加レジンの抗菌性は経時的に次第に低下する傾向は認められたものの,6ヵ月水中浸潰後も維持されていた.しかし,その効果は抗菌剤により異なり,Ag-HApの方がSi-HApに比較して強かった.抗菌剤添加レジンの曲げ強さは,無添加レジンンに比較して約5〜10%程度低下したが,弾性率,たわみ量には有意差は認められなかった.抗菌剤添加レジンの曲げ強さ,弾性率,たわみ量は6ヵ月水中浸漬後も有意な低下は認められなかった.6ヵ月水中浸漬後のAg-HAp添加レジンのΔE*abが約2.5.Si-HAp添加レジンのΔE*abが約4.3であり,これは床用レジンに透明色を使用していることを考慮すると,実際の着色床用レジンではほとんど認知できない程度の変色と考えられる.以上の結果から,本試作レジンの応用の可能性が示唆された.
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