研究概要 |
本研究は,炭酸アパタイトの電気化学的コーティングの研究成果を踏まえ,この生体活性処理をさらに改善するため,超臨界水を用いた被膜の改質を図ることを目的としている.水は臨界温度(374.4℃),臨界圧力(22.1MPa)以上では超臨界水と呼ばれ,その物性は通常の水とは大きく異なっている.超臨界水処理によるアパタイトの微細構造の変化は未知であるが,アパタイトは構造中にOH基を有しており,アパタイト被膜の改質および新たな現象の発現が期待できる.本年度はチタンの超臨界水による酸化状態の影響を検討するため,チタンに超臨界水処理を施して硬質レジンを前装し,接着強さを測定し,歯科用硬質レジン前装用前処理法としての可能性を検討した. 超臨界実験用高圧容器に,純チタン板と適量の蒸留水を入れて密封し,電気炉中に放置し,容器内を450℃,45MPaの超臨界状態にした.取り出し後,チタン板表面をX線回折,フーリエ変換赤外分光光度計,電界放射走査型電子顕微鏡により状態分析した.この超臨界水処理した純チタン板,電気炉で600℃の大気中で1時間酸化処理した純チタン板に硬質レジンを前装した.試料は24時間,37℃の生理食塩水中に保存した後,その接着強さを測定した. X線回折図形より,超臨界水処理したものおよび600℃で大気焼成した純チタン板は,ともにRutile型のTiO_2が生成していた.また,フーリエ変換赤外分光スペクトルにおいても両者の顕著な相違は認められなかった.しかし,電界放射走査型電子顕微鏡像の超臨界水処理したものでは600℃で大気焼成した純チタン板より,小さく緻密な顆粒状のTiO_2が生成していた.これらの表面処理をした純チタン板に前装した光重合型硬質レジンの接着強さは,超臨界水処理したものが最も高い値を示した.
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