研究概要 |
Embryonic stem cellの分化障害を指標とした新しいin vitro発生毒性試験法を用いて,胎児の発生に及ぼす歯科材料,すなわち歯科用モノマーおよび歯科用合金組成および可塑剤が発生に及ぼす影響を調べた.歯科用モノマーについては,Bis-GMA, UDMA, Bis-MPEPP, TEGDMA, Bis-GMA(6F),6-HHMA, MTYAで"weak embryotoxic"であった.一方,2.0-EPDMA,3.0-EPDMA,4.0-EPDMA,1.6-ADMA,1.8-ADMA,1.10-ADMA, MEPC,ホスマーM, BSNa, EDMABA, GAM, GMA, GMR, NPG, PTSNa, QTXは"non embryotoxic"に分類された.歯科用合金材料について純金属粉末を抽出した場合,その抽出液でAgのみ"weak embryotoxic"であったのに対し,Co, Cr, Ni, Pdは発生毒性が認められなかった.一方,原子吸光測定用標準試薬を用いた場合については,Cr, Hgイオンで"strong embryotoxicity",In, Sn, Sb, Vイオンでは"weak embryotoxic"であり,Ag, Co, Cu, Ni, Pd, Znイオンでは"non embryotoxic"であった.歯科用軟質裏装材などに用いられる各種可塑剤(dibutyl phthalate, n-butyl benzylphthalate, n-Butyl phthalyl n-butyl glycolate, di-2-ethylhexyl phthalate, di-2-ethylhexyladipate)では,すべて"weak embryotoxic"であった.さらに,生体組織内における難溶性の歯科材料評価については3次元培養法を応用してEBsをコラーゲンゲル内へ封埋する方法を考案した.硬化した成形修復材を直接に作用させてES細胞の分化率と細胞生存率の関係を調べた.その結果,分化率についてはグラスアイオノマーセメント,2種の光重合型コンポジットレジンの順に低下し,アマルガムの場合にはほとんど分化しなかった.また,分化率と細胞生存率との間には相関性がなかった.以上,今回に考案した方法によって歯科材料を溶媒を使用せずにES細胞に暴露させることができたことから,歯科材料の分化毒性レベルをコラーゲンゲルを用いて評価できる可能性が示唆された.
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