研究概要 |
咬合異常はそれ自体が生体にとって持続的なストレス源と考えられるが,それが明確に証明されているわけではない.そこでストレス反応と密接に関連のある内臓機能を調節する自律神経系の反応と咬合または下顎位との関係を明確にするが本研究である.大阪歯科大学学生および医局員で研究に同意を得られた者,男子5名,女子2名について,生体情報モニター,非接触型レーザー組織血流計および発汗計にて連続血圧,指尖酸素飽和濃度,心拍数,体温,末梢血流,指尖部発汗量を測定した.生体情報モニターなどからの出力はデータレコーダに記録した.また同時に採血を行い,血中カテコールアミンを測定した.被検者を静寂な診療室内のデンタルチェアーに直立座位にし,咬合の変化は遊離端欠損を想定して,全歯列スタビリゼーション型のスプリントの片側第2小臼歯以降を削除したもの,両側第2小臼歯以降を削除したもの,および全歯列型を装着させた.スプリント装着なし,いずれかのスプリントの装着(無作為に決めた)におけるデータを採取した.被験食品は,ノンカロリーの無糖のチュウインガムとした.安静時とタッピング運動時,安静時とチュウインガム咀嚼時をそれぞれ日を変えて記録した.各データの測定は安静時,被験運動時,5分後,15分後,30分後とした. 得られたデータはSignal-Basicコンピュータシステムに取り込み分析し,統計的な性質(相関.因子)を調べた.その結果スプリント装着直後に心拍数が増加する傾向にあった(p=0.053).血圧には有意な変動は認められなかった.両側または片側のスプリントを装着すると5分後に血中カテコールアミンが上昇する傾向にあった(p=0.1).R-R間隔のCVなどに変化が認められたが,個人差に関する因子が最も大きく,咬合の変化に対して有意差は認められなかった.実験的に咬合を変化させると自律神経系に影響を及ぼすことがうかがえたが,統計的に証明するには到らなかった.
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