研究概要 |
BMP-2は、骨芽細胞の分化と骨形成に対して重要な役割を演じていることが知られているが、最近、このBMP-2の促進を活性化させる物質を検索したところ、コンパクチンが分離されており、その骨に対する同化作用の可能性という利点が注目されてきている。そこで今回、当初の予定であったBMPに先駆け、コンパクチンを用いて実験を行った。実験動物には近交系マウス(C3H/HeJ)を用い、移植骨としてドナーマウスから脛骨を摘出し、これを整形して大きさの均一化を図った後、レシピエントマウス背部皮下組織中に移植した。この際、浸透圧ポンプを移植骨に接続させ一緒に皮下組織に埋入させることにより、薬物の持続投与が可能な状態をつくった。薬物投与に関しては、コンパクチンの投与を行う群と行わない群(対照群)とに分け、投与群の中にはさらに投与量、投与期間の異なる数種の群を設けた。現在までにドナーとレシピエントとを合わせて60匹のマウスを用いて予備実験を行った。コンパクチン投与は5μM,2週間投与群、10μM,2週間投与群、10μM,1週間投与群とした。投与後摘出した脛骨は、燐酸緩衝ホルマリン固定液にて固定し、実体顕微鏡によるマクロ観察と軟X線画像解析による骨塩量の測定を施行した。また、HE染色、アルカリ性ホスファターゼ染色、酸性ホスファターゼ染色等により組織学的観察を施行した。これまでのところ1週間投与群では大きな変化は認められないものの、2週間投与群では骨芽細胞の増加及び骨小柱の増加等が観察された。今後、これらの結果をもとに4週間投与群等個体数を増やし、またBMP-2誘導を遺伝子的に解析するなどして、骨に及ぼすコンパクチンの効果を検討、ビスフォスフォネートの骨吸収抑制効果等も併せて実験し、遊離骨移植に対する有用性について検討する予定である。
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