研究概要 |
当初の予定であったビスフォスフォネートに先駆け、コンパクチンを用いての実験を行った。実験動物には、近交系マウスMRL/MpJを使用し、現在までにドナーとレシピエントとを合わせて約100匹のマウスを使用した。投与期間は1〜4週間とし、投与濃度は10μMとした。実験終了後に摘出した脛骨は、燐酸緩衝ホルマリン固定液にく固定、脱灰後、パラフィン包埋し、HE染色、TRAP染色、アザン変法染色等により組織学的観察を施行した。その結果、コンパクチンを投与した骨では外骨膜側に著しい骨添加が認められ、皮質骨の厚さと骨の外径は投与後4週で対照骨に比べて有意に増加していた。一方、添加された骨の内側と既存骨との間には、骨芽細胞の増加と共に破骨細胞の著しい数の増加が認められ、骨吸収も亢進している像が観察された。この破骨細胞数の増加はコンパクチン投与後2週目においてすでに有意であった。これらのことから、コンパクチンの投与により,移植骨の骨膜性骨形成が促進され,添加骨内部に広範囲の骨吸収が見られるにもかかわらず,骨全体は増加することが示された。このことは,移植した骨のモデリング、ないしは、リモデリングの過程において,骨吸収を上回る骨形成が引き起こされたことを意味しており,コンパクチンの投与により、骨吸収と骨形成のバランスが、正に転化したことを意味している。以上より、コンパクチンの局所投与は、骨の形成と吸収を共に亢進させ、高回転型の骨代謝を生ずる可能性が示唆された。今後、これらの結果をもとにPCR法を用いて、BMP-2やRANKL等の遺伝子発現についても研究していく予定である。
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