研究概要 |
歯科領域の慢性的歯髄炎などの後に発生する難治性疼痛疾患の多くが求心路遮断性疼痛に類似した病態を示していることから、疼痛刺激時に脊髄後角に発現するとされる癌遺伝子であるc-fosを新たな侵害刺激マーカーと考えて研究を開始した。 まず予備実験群としてデーターを対照群及び基準値とし、マウスおよびラットを用い以下の3つの実験系モデルを製作した。全身麻酔下で上顎神経を露出し、(1)抹消神経切断モデル、(2)末梢神経絞扼モデル、(3)上顎前歯歯髄を露出しホルマリンを添付仮封した歯髄慢性刺激モデルの3群である。 (1)末梢神経切断、(2)末梢神経絞扼の各モデルはモデル完成を待った後に実験に供し、(3)歯髄慢性刺激モデルは作成と同時に実験を開始した。 (1)(2)においては視床のtrigeminal nucleus caudalis(TNC)と後角C1にタングステンマイクロエレクトロードを挿入し、前歯歯髄の電気刺激を、1mA, 20HZ, 2msとした。 各々実験開始後30分ごとに、ホルマリンによる灌流固定を行い、最長3時間経過モデルまでの脊髄・脳を摘出し凍結標本として供した。 その結果、侵害刺激投与後各標本群において、c-fosの観察にはRT-PCR法を用い観察したところ、C1およびTNCにあるc-fosの発現が経時的にやや増加してゆく傾向見られた。また(3)においてはモデル作成当日、1日目、3日目、1週間目、その後1週間傾向をうかがわせるもの、また発現が著明でないものなど種々であった。 preprodynorphin(PPD)m RNAの発現にはIn situ hybridization法にて観察した。 観察は蛍光抗体法により行ったが、第I層、第II層に主に認められており脊髄後角複合三叉神経核や傍核に観察されたものの、モデルの別、や、経時的要素との相関関係を確定するには至らなかった。
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