顎関節症患者滑液より回収された浮遊細胞における炎症性メディエイターの遺伝子解析

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12671923
• 研究機関: 秋田大学
• 研究代表者: 福田 雅幸 秋田大学, 医学部, 助手 (20272049)
• 研究分担者: 高橋 哲 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (60226850)
• キーワード: 顎関節内障 / 免疫組織化学 / iNOS / COX-2 / NFkappa-B / タンパク分解酵素 / 滑液浮遊細胞 / PCR

研究概要

顎関節内障患者の関節内での病態を解明するため、手術で得られた滑膜における炎症性メディエイターの発現について免疫組織化学的に解析を行った。われわれは、顎関節症患者滑液中に一酸化窒素(NO)が存在する事を報告し、患者滑膜での誘導型NO合成酵素(iNOS)の発現を免疫組織学的に検討し報告した(Arch Oral Biol 46,2001)。患者群では滑膜表層細胞、血管内皮細胞にiNOSが発現していたが、骨折患者滑膜ではほとんど認められなかった。また、NOによって誘導されるCyclooxygenase-2(COX-2)の発現についても同様に検討した。COX-2は、顎関節症患者滑膜の表層細胞、血管内皮細胞で疾患特異的に発現し(第45回日本口腔外科学会,2000)、さらに滑膜炎との間に相関を認めた(International Association for Dental Research, 2002)。滑膜におけるCOX-2の発現が滑液中のProstaglandinの濃度に反映されているかどうかをELISA法にて検討したところ、COX-2の発現との間に関連性を認めた(第46回口腔外科学会,2001)。また、これらの発現に関与する転写因子であるNFkappa-Bが核内移行していることを免疫組織化学的に確認した(第14回日本顎関節学会,2001)。滑液中の浮遊細胞については、炎症性メディエイターの発現を遺伝子、タンパクレベルで解析中であり、パンピングにより得られた浮遊細胞からtotal mRNAを回収することに成功した。浮遊細胞の一部は免疫細胞化学的検索に用い、iNOS、COX-2、IL-1beta、タンパク分解酵素について検討中である。また、現在各種炎症性メディエイターのプライマーを作成し、PCRの至適条件を検討中である。

研究成果

• [文献書誌] Homma H, Takahashi T, Seki H, Ohtani M, Kondoh T, Fukuda M.: "Immunohistochemical locallzatlon of inducible nitric oxide synthase in synovial tissue of human temporomandibular loints with internal derangement"Archives of Oral Biology. 46・1. 93-97 (2001)
• [文献書誌] 高橋 哲: "顎関節症の生化学的研究の最前-顎関節滑液解析の診断および治療への応用-"東北大学歯学雑誰. 20・2. 59-74 (2001)
• [文献書誌] 大貫敬嘉, 福田雅幸, 関 宏, 三好康太郎, 飯野光喜, 船木勝介, 高橋 哲: "顎関節症患者のMRI画像における円板後部組織の低信号化の評価-鏡視下剥離授動術前後の比較検討-"日本顎関節学会雑誌. 13・3. 334-339 (2001)
• [文献書誌] 大貫敬嘉, 福田雅幸, 関 宏, 船木勝介, 飯野光喜, 高橋 哲: "Stuck discを示したクローズドロック患者における治療奏効例のMRIによる評価"日本口腔外科学会雑誌. 48・2. 75-81 (2002)
• [文献書誌] 大貫敬嘉, 福田雅幸, 関 宏, 奈良潤一郎, 船木勝介, 飯野光喜, 高橋 哲: "顎関節クローズドロック患者の円板後部組織のMRI低信号化の治療前後での比較検討"日本口腔外科学会雑誌. 51・1. 2-7 (2002)