研究概要 |
第8番染色体短腕上の対立遺伝子の欠失は多くの種類の腫瘍で頻繁に起こっており、これらの欠失領域には癌抑制遺伝子が存在するものと推定されている。口腔癌では未だに第8番染色体の詳細な異常状況が検索されていなかったため、私達の研究グループは第8番染色体短腕上の異常状況を詳細に検討したところ、2ヵ所(8p22,8p12)の共通欠失点領域を口腔扁平上皮癌において同定した。これらの共通欠失領域のうち、8p22に一致してFEZ1(F37/Esophageal cancer related genecoding leucin-zipper motif)遺伝子が単離された(Hideshi Ishii, et a」.,1999)。そこで、FEZ1遺伝子が口腔扁平上皮癌の発生、進展に果たす役割を検討し以下の結果を得た。 結果: 1)RT-PCR法により、口腔扁平上皮癌組織31例のうち、11例(35%)、細胞株8種中全て(100%)においてFEZ1遺伝子の発現減弱・消失が認められた。 2)これら癌組織31例のうち3例でRT-PCRにより得られたcDNAのサイズが他とは異なり短かった。塩基配列を調べて比較したが、特徴のある異常パターンは認められなかった。 3)5-aza-2'-deoxycytidineによる脱メチル化により8種類全ての細胞株でFEZ1遺伝子が回復した。 以上の結果から、口腔癌の発生・進展には癌抑制遺伝子FEZ1の発現減弱・消失が関与しており、その転写制御メカニズムとしてメチル化が挙げられることが明らかになった。
|