骨の再生医療を目指し、1)を中心に以下の研究を行った。 1)遺伝子導入骨髄間葉系幹細胞の移植による骨の再生 骨髄細胞のなかに存在する種々の細胞に分化することができる骨髄間葉系幹細胞にin vitroにてレトロウイルスベターによりBMP2の遺伝子を導入したところ骨芽細胞に分化した。この細胞の皮下への移植による新生骨の形成が見られた。BMP2遺伝子を導入した骨髄間葉系幹細胞の移植による骨再生の可能性が開けたと考える。 2)骨再生のための新たなScaffoldの開発 - ポリロタキサン-ハイドロキシアパタイト複合体- 骨組織に限らず、細胞移植による再生医療にとっては細胞の足場となるScaffoldが非常に重要となる。我々は新しい生体内分解性材料であるポリロタキサン(PRX)に注目し、PRXゲルと骨芽細胞接着性を有するハイドロキシアパタイト(HAp)の複合体(PRX-HAp)を作製し骨再生のScaffoldとしての可能性を検討した。PRX-HApへの骨芽細胞の接着が認められ、骨芽細胞の付着したPRX-HApの移植により類骨様組織の形成が見られた。 3)自己血清によるヒト骨髄細胞の増殖および骨芽細胞への分化 再生医療においては患者自身の細胞の培養が必須である。これまでの細胞培養においては牛胎児血清(FBS)が多く用いられてきているが、近年のBSEなどの問題を考えると実際の臨床においての牛胎児血清の使用は危険である。そこで我々は最も安全と考えられる患者自身の自己血清に着目し、自己血清による骨髄間質細胞の増殖、骨芽細胞への分化をFBS使用の場合と比較検討した。自己血清を用いてもFBSを用いた場合と同等の骨髄間質細胞の増殖、骨芽細胞への分化が見られた。実際の臨床における骨再生医療には最も安全であると考えられる患者自己血清の使用の可能性が示唆された。
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