研究概要 |
本年度は、11種類の口腔癌細胞株(HSC2,HSC3,HSC4,Ca9-22,SCC15,SCC25,SCC66,SCC105l,SCC111,BSC,NAN2)において,CDK阻害剤Flavopiridolの影響を検討した。各細胞に、Flavopiridolを添加することで濃度依存性細胞増殖抑制効果を認め,そのIC_<50>値は100〜300nMであったまた,Flavopiridolの抑制効果は300nMで有効であっため,この濃度で時間依存性増殖抑制効果を検討した。その結果、すべての細胞株において時間依存性効果を認め、24時間以内に細胞死と思われる細胞数の減少が認められた。しかしながら正常上皮培養細胞株であるHaCaTにおいては、増殖抑制効果が認められなかった。CDK阻害剤は、各細胞にCDK1およびCDK2活性の減弱を生じさせた。細胞周期解析により認められたsub-G1期細胞がアポトーシス細胞であることを確認するために,Flavopiridolを作用させた細胞にアガロースゲル電気泳動法によるDNA断片化およびウェスタンブロット法によるPARPの検出を行った。アガロースゲル電気泳動法による検討においては,sub-G1期細胞の出現時期に一致してDNAの断片化を認め,PARPの活性化による85kDaの活性型の出現も同様の時期に認めた。また、アポトーシスの誘導のみならず、各細胞においてサイタリンA,サイタリンB、CAK, CDC25Cの発現低下が見られた。また、CDK阻害剤による口腔扁平上皮癌のアポトーシス誘導にはBCL-2,Baxは関与せず、Bcl-Xが関与していた。以上の結果から、CDK阻害剤は口腔癌の細胞周期制御を介した新しい治療法になる可能性が示唆された(日本癌学会総会,2001)。
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