研究概要 |
本研究では、まず、癌で生じている細胞周期関連因子の異常を口腔癌臨床材料において検索した。その結果、口腔癌でCDK2の発現異常が認められ、その過剰発現がN分類(p=0.025),腫瘍分化度(p=0.032)および腫瘍浸潤度(p=0.017)関連し、予後とも相関することがわかった(Jpn. J. Cancer Res,2001,Oral Oncol. In press,2002)。 この結果から、CDK2に対する阻害剤が細胞周期を制御することによる新しい抗腫瘍剤として応用できるのではないかと考え、口腔扁平上皮癌細胞株におけるCDK阻害剤(RoscovitineならびにFlavopiridol)の抗腫瘍効果について検討した。その結果、11種類の口腔癌細胞株(HSC2,HSC3,HSC4,Ca9-22,SCC15,SCC25,SCC66,SCC105L, SCC111,BSC, NAN2)において,CDK阻害剤を添加することで濃度ならびに時間依存的にその細胞増殖を抑制することがわかった。また、正常上皮培養細胞株であるHaCaTにおいては、増殖抑制効果は認められなかった。CDK阻害剤により、各癌細胞にはサイクリンA,サイクリンB、CAK, CDC25Cの発現低下が見られ、CDK1およびCDK2活性は減弱を認めた。細胞周期の解析では、G1期ならびにG2/M期への細胞の集積が認められるとともに、subG1期への細胞集積を認めた。このSubG1期の細胞集積はDNA断片化、PARPのcleavageより、アポトーシスの誘導によるものであると考えられた。また、CDK阻害剤による口腔扁平上皮癌のアポトーシス誘導にはBCL-2,Baxは関与せず、Bcl-Xが関与していた。以上の結果から、CDK阻害剤は口腔癌の細胞周期制御を介した新しい治療法になる可能性が示唆された(日本癌学会総会2001)。
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