研究概要 |
口腔領域悪性腫瘍に高頻度に用いられる化学療法剤に耐性を示す癌細胞の存在が指摘されている。タキソール(TXL)は従来の抗癌剤とは全く異なる作用機序であり,抗癌剤耐性を示す癌細胞に対しても増殖抑制効果を示すことが知られている。また,TXLがアポトーシスを誘導し,抗腫瘍効果を示すとの報告もある。本研究では,TXLに対する口腔由来癌細胞の殺細胞効果を無血清培養下で検討し,白金製剤耐性口腔癌細胞に対しTXLが抗腫瘍効果を示すかを検討し,さらにTXL処理された癌細胞のアポトーシス誘導を検索し,癌抑制遺伝子であるp53とRb遺伝子変異と抗癌剤感受性との関係を検索した。 外陰部由来扁平上皮癌株A431から得られた抗癌剤耐性株A431#4を用いて各種抗癌剤の細胞増殖抑制試験を行い,抗腫瘍効果を50%増殖抑制濃度(IC50)で求めた。A431#4は親株であるA431に比較してCDDPでは3.5倍,ADMでも3.5倍の耐性を示したが,TXLでは逆に2.4倍高い感受性を示した。 一方,ヒト口腔由来扁平上皮癌NA,KA,ヒト唾液腺由来腺癌細胞HSY,HSGおよび正常細胞として線維芽細胞G.FIBRO,血管内皮細胞HUV-ECを用いて組織型感受性試験を行った結果,TXLは唾液腺由来腺癌細胞に対して強い殺細胞作用を示した。また,線維芽細胞,血管内皮細胞の感受性は腺癌細胞と扁平上皮癌細胞の中間を示した。しかし多剤耐性株A431#4に比較すると,感受性は低いことが明らかとなった。以上の結果から,正常組織に対して毒性が高くなる可能性が示唆され,さらに,多剤耐性を示す扁平上皮癌に対しては正常細胞より低濃度のTXLでも殺細胞作用を示し,臨床での耐性癌への応用が期待された。現在,TXL処理された癌細胞のアポトーシス誘導を検索し,癌抑制遺伝子であるp53とRb遺伝子変異と抗癌剤感受性との関係を検索中である。
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