研究概要 |
1.正常口腔粘膜上皮細胞と口腔扁平上皮癌細胞で検討したところ、3つのテロメラーゼコンポーネントのうちtelomerase reverse transcriptase(hTERT)の発現のみがテロメラーゼ活性と相関していた。 2.初代培養の正常口腔粘膜上皮細胞においては、不死化細胞や癌細胞と同程度の明らかなテロメラーゼ活性とhTERTの発現が認められた。正常細胞では継代に伴いテロメラーゼ活性およびhTERTの発現は抑制された。telomeric repeat binding factor 1の発現はhTERTと逆相関する傾向を示した。 3.初代培養の正常口腔粘膜上皮細胞ではhTERT遺伝子の完全長のみの発現が認められ、癌細胞および老化細胞においてはβスプライシングバリアントの発現がみられた。hTERT遺伝子のスブライシングは正常細胞では抑制されており、この機構は老化、癌化において逸説する可能性が示唆された。 4.in situ Hybridizationによる検討の結果、3つのテロメラーゼコンポーネントを発現している細胞の分布の異常、個々の細胞における発現量の上昇が癌化の過程において早期に起こっている可能性が示唆された。 5.hTERTは単独で不死化能を持つこと、またhTERTを既知の不死化遺伝子HPV16,SV40なとと組み合わせることにより、高率に細胞を不死化できる事が明らかとなり、この系を用いてヒト正常口ロ控粘膜上皮細胞、歯肉線維芽細胞、歯乳頭細胞、歯髄細胞、歯根模膜細胞、および基底細胞母斑症候群患者由来骨芽細胞の安定な不死化細胞を樹立した。
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