研究概要 |
本研究で扱うp130はイノシトール1,4,5-三リン酸[Ins(1,4,5)P_3]結合性蛋白質として申請者らがラット脳より見い出した新しい分子である。この分子はホスホリパーゼC(PLC)と高い相同性を有しながらPLC酵素活性を発揮し得ないものだが、申請者らはp130と最も相同性の高いPLCアイソザイムであるPLC-δ1との種々のキメラ分子を作製し活性消失の分子機構解明を試みた(Kanematsu et al.)。 p130はそのアイソタイプを含めて線虫から種々のほ乳動物まで保存性を保ちながら広く分布していることから、「酵素活性を持たないPLC様蛋白質ファミリー(PLC-Related catalytically Inactive Protein)」として、PRIPファミリーという名前を提案した。またPRIPの過剰発現細胞を用いた実験からそのIns(1,4,5)P_3結合能によって細胞内カルシウムシグナリングの修飾蛋白質として機能し得ることを実験的に示した(Takeuchi et al.)。これに関連してPRIP及びPLC-δのIns(1,4,5)P_3結合領域であるpleckstrin homology(PH)ドメイン単独でも口腔組織由来癌細胞株を用いた実験で同様の細胞応答が観察され、さらに細胞増殖能への影響も認めており現在詳細な検討を加えているところである。 酵母two-hybrid法により同定したPRIP結合蛋白質、蛋白質脱リン酸化酵素(protein phosphatase-1,PP1)とGABA_A受容体に結合する蛋白質GABARAP(GABA Receptor Associated Protein)との試験管内での結合を確認し、現在これら分子間の機能的な相互作用について解析中である。PP1に関してはマウス脳からの免疫沈降によっても結合が確認され、またPRIPが濃度依存的にPP1の酵素活性を抑制的に調節していることを明らかにした(投稿中)。
|