研究概要 |
近年、癌の進展過程における異常増殖および転移能の獲得が血管新生に強く依存していることが明らかにされてきているが、実際の臨床データに結びついた検討は少なく、不明な点が多い。 本研究の目的は、血管新生蛋白としても注目されているが、口腔領域の腫瘍ではいまだ報告されていないId1,Id2,Id3についての発現分布や発現様式を免疫組織学的に検索し、VEGFとの関連やリンパ節転移との関係についても検討することである。 症例の収集については、口腔扁平上皮癌1次症例のうち近年の症例を中心に現在までに68例を収集した。生検および手術標本よりホルマリン固定HE標本を作製するとともに、ブロッティングのため一部は凍結組織標本として保管した。免疫組織学的染色に使用した抗体はId1,Id2,Id3(Santa Cruz Biotech.,Inc.)で、陽性対照はヒト膵癌組織を用い条件設定を行った。判定は陰性(-)、弱陽性(+)、強陽性(++)として検討したところ、口腔扁平上皮癌においてはId1(69%),Id2(54%),Id3(49%)でId1の発現頻度が最も高く、それぞれ分化度が低くなるにつれてその発現がより強度になる傾向が認められた。 凍結組織標本を用いて行ったウエスタンブロット法による解析においても口腔扁平上皮癌における各Id蛋白の発現を確認した。 次年度は、各標本についてIn Situ Hybridization法を用いての検討と、リンパ節転移といった臨床因子や予後との関係やVEGFとそのレセプターでありリンパ管新生にも関与するFlt-4についても検索を行う予定である。
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