研究概要 |
我々は、口腔扁平上皮と口腔扁平上皮癌細胞におけるFas/Fasリガンドシステムとアポトーシスとの関係について研究してきた。これまでに、我々は培養扁平上皮癌細胞にFas抗原及びFasリガンドのmRNAが発現することをRT-PCR法を用いて証明した。さらに、Fasリガンドは無血清条件下で、培養扁平上皮癌細胞にアポトーシスを誘導することを見いだした(Seta et al.,2000)。口腔扁平上皮癌細胞のアポトーシスをより単純な系で調べるために、我々は培養口腔扁平上皮癌細胞(SCC-25,SCCKN, SCCTF)を用いて、蛋白質脱リン酸化酵素阻害剤であるオカダ酸とカリクリンAがこれらの細胞にアポトーシスを誘導することを見いだした。また、オカダ酸により誘導されるSCC細胞のアポトーシスにおいて、Fas抗原及びFasリガンドのmRNA及び蛋白の発現が、時間および濃度依存的に増強した(Goto et al.,2002)。また、caspase-3のタンパクレベルでの減少も、オカダ酸の時間及び濃度依存的におこっており、このアポトーシスはcaspase系を介して起こっている。Fas及びFasリガンドの転写因子としてNF-κBが知られており、オカダ酸はこのNF-κBの活性化を示す指標となるIκB-αの分解を誘導した(Goto,2002)。更に、オカダ酸はNF-κBによるFasリガンドの転写活性を促進することが分かった(Fujita et al., submmited)。IκB-αはその塩基配列中のSer^<32>のリン酸化がおこることによりNF-κBの活性化がおこることが知られている。これらの結果から、オカダ酸がIκB-αのリン酸化を促進させることで、NF-κBが活性化し、Fas及びFasリガンドの発現を転写レベルで促進させ、SCC細胞にアポトーシスを誘導するという1つの系を提示する。
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