研究概要 |
先天性頭蓋顎顔面疾患は,頭部および顔面の形態的な異常を伴う病態で,多くの疾患や症候群に起因し,その中でFibroblast growth factor receptor(FGFR)遺伝子ファミリーの異常としてCrouzon症候群,Apert症候群,Pfeiffer症候群,Jackson Weiss症候群などが報告されている.しかし同一遺伝子(FGFR2)の原因による先天性頭蓋顎顔面疾患であっても,また同一疾患(Crouzon症候群のFGFR2エクソン7および9)であっても,その表現形として臨床症状は重症例から軽症例まで様々である.これは細胞レベルの生物学的活性の変化によるものと考えられる.そこで現在,それら骨系統疾患患者より培養された骨髄間葉系細胞の生物学的活性を解析している.研究方法:頭蓋顎顔面疾患患者の骨より骨髄間葉型細胞(骨芽細胞)を分離培養し、種々の成長因子(FGF,BMPなど)に対する細胞生物学的活性を、骨分化の指標となるALP、石灰化度を用いて測定し、コントロール細胞との違いを明らかにする.サンプル:頭蓋顎顔面形成手術を受けた患者の血液(リンパ球)及び骨を採取し、骨髄間葉型細胞(骨芽細胞)を分離培養凍緒保存したもの。リンパ球の遺伝子診断にてFGFRの変異が認められた各群(Apert症候群.Crouzon症候群など)と、変異が認められないその他のコントロール群で比較検討した。結果:使用した細胞は、Apert症候群,コントロールともに一例のみ・正常細胞においてFGF2の投与により、第4日にてALP活性は抑制される。Apert症候詳においては、抑制されなかった。第7および14日においては、両群ともにALP活性は促進した。石灰化(カルシウムアッセイ)ではFGR2の投与により第14日にて、正常細胞は抑制、Apert症候群は、抑制されなかった.考察:Apert症候群患者ではFGR2による骨組織の細胞抑制が低下することから,疾患の原因として頭蓋骨の形成段階で分化誘導異常が示唆された.今後症例を増やす予定である.
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