高速シネMRIは心拍同期の心臓撮像法(同期サンプル法)を応用した方法である。本研究では高速シネMRI法によって生理的な嚥下運動を撮像する方法を開発し、さらにこれを三次元動画像とした。撮像法は高速field echo法で、TR=33ms、TE=2.2ms、Flip angle=30°、繰り返し回数は2回、断層面の厚さは5mmである。外部トリガーの入力間隔は4秒間隔で10msとし、被験者には3ccの液体を4秒間隔で128回嚥下してもらった。その結果33msで1枚の割合で、計210枚の連続模擬画像が得られたので、これを3次元動画像として再構築した。使用したMRI装置は島津-マルコーニMAGNEX ECLIPSE 1.5T Power Drive 250(国際電気通信基礎技術研究所(ATR)脳活動イメージングセンタ所有)で、対象は本研究に対して同意の得られた健常成人2名である。 その結果、舌の送り込み運動開始時から165ms後には軟口蓋と喉頭が挙上し(嚥下の口腔期)していた。330ms後では鼻咽腔は閉鎖して舌根と咽頭後壁が接し、声門も閉鎖しつつあった(咽頭期)。495ms後では、食道入口部の開放が始まっており、嚥下の咽頭期から食道期への移行期と思われた。660ms後では鼻咽腔、咽頭腔、喉頭も開放しつつあり、食道期の終盤と思われた。その後、喉頭の開放はさらに進み、990ms時では、安静時に復帰していると思われた。 本研究によって、これまで困難であった嚥下運動(口腔期から咽頭期、食道期まで)を3次元の動画像として描出できたので、各嚥下器官のより正確な動きや所要時間が解析可能になった。今後は本研究の結果を基礎として、嚥下運動のシミュレーションロボットの開発に展開していく考えである。
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