口腔癌の治癒率向上には早期診断、早期治療が重要となる。我々は臨床においてヨードおよびトルイジンブルーを用いて視診的な診断を行ってきた。今回、その染色性と病理組織学的関係を検討することを目的に発癌ラットを用いて実験を行った。 実験方法 4NQO水投与開始後、ラット舌背部の観察をおこない視診上白斑、紅斑、表面粗造感を呈した状態で2%トルイジンブルーによる染色後、2%ヨードによる二重染色を行い舌を摘出した。 標本は正常上皮、異型上皮および早期浸潤癌を含む切片をH-E染色にて選択し、ヨード染色陽性部の上皮を観察、さらにp53免疫染色およびmicrodissection法を用いたPCR-direct-sequencingを行った。特に異型上皮部、早期浸潤癌部の染色性の相違、p53遺伝子変異の関わりに着目した。 結果および考察 ヨードおよびトルイジンブルーによる染色性と異型上皮の病理組織学的な関係では、明らかな相関は得られなかったが、上皮異型の程度が増すにつれ染色度が高いものと考えられた。p53免疫染色は部位別に異型上皮に陽性率が高く、正常上皮および早期浸潤癌部と有意差を認めた事から、癌化早期の段階から関与している事が示唆された。また、遺伝子変異の検出に関しては早期浸潤癌部と同一コドンの変異を隣接異型上皮からも認めた。 以上より、p53遺伝子変異を認める異型上皮は癌化の可能性が示唆され、今後もさらにヨードおよびトルイジンブルーによる染色および遺伝子検索をあわせ研究予定である。
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