平成12〜13年度の研究においては、唾液腺ならびに口腔疾患におけるEBVゲノムの検出を、in situ hybridization(ISH)法、PCR法、in situ PCR法を用いて検討した結果、唾液腺疾患ではWarthin腫瘍10例全例、好酸性腺腫(1/1)例、多形性腺腫(12/30)例、腺様嚢胞癌(2/4)例、粘表皮癌(2/3)例、多形性腺腫内癌(1/2)例にPCR法でEBVゲノムが検出された。in situ PCRでは、Warthin腫瘍において腺腫部分およびリンパ球の核に一致して高頻度にシグナルが認められた。しかしその他の唾液腺腫瘍においてはリンパ球に陽性細胞を認めるが、上皮部分は陰性であった。Warthin腫瘍においてはEBVゲノムが高頻度に認められ、EBVがWarthin腫瘍の発生に関与している可能性が示唆された。 口腔疾患においては、PCR法では扁平上皮癌(18/22)例、線維腫(11/21)例、epulis(16/19)例、白板症(8/16)例、多形性腺腫(6/10)例、乳頭腫(6/9)例、扁平苔癬(7/8)例でEBVゲノムが検出され、口腔疾患組織の中にEBVが高率に存在していることが証明された。ISH法では全体の24例でEBERおよびBHLFの検出ができ、その感染細胞の局在は主にリンパ球であることが明らになった。更に、扁平苔癬にはEBERおよびBHLF mRNA陽性リンパ球のlabelling indexが他の疾患に比較して有意に高値を示した結果より、扁平苔癬の病因にEBV感染が関与している可能性が示唆された。チオレドキシンは免疫組織化学的には唾液腺腫瘍、扁平上皮癌、白板症、扁平苔癬において発現がみられたが、今後も検討を続ける方針である。
|