研究概要 |
我々は免疫組織化学染色で口腔扁平上皮癌のアミノ酸1〜34領域の副甲状腺ホルモン関連タンパク(PTHrP)と角化の組織分化度と悪性度との間の関連を見つけた(要旨,the Int.Oral & Maxillofac.Surgeons,1997年,於;京都)。この研究の目的はPTHrPの1-34領域と角化の免疫組織化学染色結果との関連がPTHrPのmRNAの発現ではどうかを決定することであった。 この研究には口腔扁平上皮癌33症例の生検材料(内訳は女性11例、男性22例)と4例の正常粘膜組織を用いた。以前に行った1-34領域のPTHrPポリクローナル抗体の免疫組織化学染色はLSAB法と今回の非放射性のin situ hybridizationは5μmの厚さのパラフィン切片を用いて行った。検索にはアミノ酸のPTHrP6-16をコードするデゴキジゲニンでラベルしたヒトPTHrP mRNAオリゴヌクレオチドプローブを用い、マイヤーのヘマトキシリンで核染をした。PTHrP mRNAの陽性シグナルは33検体中30検体(91%)に発現していた。すべての検体は2つのグループに分けられた。すなわち免疫組織化学的検査で、一つは軽度な染色性を示し、他方は強度な染色性を示した。しかし、強度な染色性を示したグループのmRNA陽性シグナルの発現パーセントは100%(13例中13例)で、弱い染色性を示したグループの発現パーセント85%(20例中17例)よりは高かったが、mRNAの発現で2グループを区別することは困難であった。この結果はPTHrPの転写が口腔癌の角化や分化に影響を与えないということを示唆している。PTHrPのpost translational processingはこの現象の主な役割を担っているのかもしれない。追加研究ではこの問題点を明確にしたい。
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