研究概要 |
腫瘍随伴症候群の一つである悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症は患者のクオリティーオブライフを保つうえで考慮しなければならない障害である。副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)はこの高カルシウム血症の主要な原因因子である。一方、PTHrPは正常組織において多様な生理作用を持つことが報告され、単に骨代謝のみの関連ではとらえられない蛋白である。種々の腫瘍において増殖や分化に関与しているとの臨床的報告がある。PTHrP遺伝子はalternative splicingを受けてmRNAとなり,翻訳された蛋白は翻訳後修飾を受けて種々の機能フラグメントとなって作用を発揮する。この一連の過程のなかでmRNAの発現の状態を把握することは悪性腫瘍におけるPTHrPの関与を理解するうえで重要と考えられる。私たちは扁平上皮癌の分化との関連を示唆する結果を免疫組織学的に認め報告している。そこで組織生検にて扁平上皮癌と診断された32例の口腔扁平上皮癌を用いて,in situ hybridization法により種々のPTHrP mRNAの発現を検討し,免疫組織化学によるPTHrP発現や口腔扁平上皮癌の性状と比較検討した。PTHrP(6-16)認識プローブによるmRNAシグナルは分化度の低い腫瘍,角化度の低い腫瘍,悪性度の高い腫瘍で強い傾向があった。口腔扁平上皮癌の多くでPTHrPが存在することが確認され,この蛋白が癌細胞で合成されていることがmRNAレベルで初めて示唆された。さらにPTHrPのmRNAの発現が口腔扁平上皮癌の分化や角化,組織学的悪性度に関与していることが示唆された。PTHrPの発現は悪性化の過程で発生すると考えられるのでp53との関係を理解する事は重要である。口腔癌で増殖のマーカーであるKi-67についても関連をみた。他部位の腫瘍の報告と異なり、免疫組織学的検討ではp53とPTHrPとの間に関連は認められなかった。
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