研究概要 |
これまでの研究において、マウス大膓癌細胞(colon26)から分泌されるserine protease inhibiter familyに属する蛋白質caspinについて各種の細胞外マトリックスへの結合性,組織分布について明らかにし,またこのタンパク質の発現量と腫瘍細胞の転移能とが負の相関を示すことを明らかとしてきた。最近この蛋白質が強い血管新生抑制作用を有することが報告され,caspinが発生,組織修復や悪牲腫瘍の転移など,多彩な生物学的現象に,血管新生の抑制的制御を通して関わっていることが予測されるようになった。 Caspinの血管新生抑制機序を検討するためにまず大腸菌を用いた蛋白質遺伝子組み替えによるcaspinの発現系を確立した。この組み換え蛋白質を用いて種々の培養細胞に対する影響を検討し,内皮細胞に特異的に細胞死をもたらすことを明らかとした。また,rat aorticring assayやマトリグル上の血管内皮細胞の管腔形成作用について検討し,血管の新生を抑制することを確認した。 さらに培養内皮細胞が、caspinの添加によりアポトーシスに特異的なDNAの断片化を引き起こすことを、アガロースジェルによる電気泳動と、TUNEL法にて確認した。また、GFPをラベルしたAnnexin Vを用いてアポトーシス細胞の初期に観察される細胞膜の変化を検出できること,アポトーシスに特異的な蛋白分解酵素であるカスパーゼ3の細胞内の活性の上昇を示すこと、ミトコンドリアの膜電位の消失が起こることを明らかにした。これらの結果はcaspinによる血管新生抑制作用のメカニズムが、caspinが血管内皮細胞に特異的にアポトーシスを誘導することによるものであることを示している。 今後,delution mutantsを作製し,caspinの機能ドメインを確定し、情報伝達経路を明らかにするなど機能解析を進める予定である。またこれまでに得られた結果については近々投稿予定である。
|