腺様嚢胞癌は増殖が緩慢であるにもかかわらず、神経や脈管に浸潤しやすく、局所再発や肺転移の頻度が非常に高い.しかし同腫瘍で移植継代として樹立された系は非常に少ない.現在、われわれは口底部原発の腺様嚢胞癌患者の摘出片をヌードマウス皮下に移植し継代を続けており、これを使用して浸潤、転移のメカニズムを解明しようと試みている. BALB/cヌードマウス皮下にて継代中の口底由来腺様嚢胞癌の腫瘍組織を採取し、同系のヌードマウスの口底に同所性移植を行い、移植後5ヶ月で屠殺し、微小肺転移の有無を病理組織学的に検討している.また、同時にヌードマウス皮下へ肺組織を移植し、転移腫瘍組織の増大を確認した後、再び口底に移植針にて同所性移植を行う.これを繰り返し行い、in vivoセレクション法による高肺転移腫瘍巣の獲得を行っている.さらに、移植継代皮下腫瘍の培養細胞を用いて、ヌードマウスの口底への移植、または尾静脈への注入を行い、同様の実験を検討している.現時点ではこれまでと同様に、どの方法においても同所性移植腫瘍の増大も乏しく、肉眼的および病理組織学的に屠殺時での肺の微小転移腫瘍を確認できていないが、同肺をヌードマウス皮下へ移植し腫瘍が増大してくるのを引き続き観察している.
|